ここでは、これから活動を始めようというときに、どのように活動村、活動相手や活動内容を決めてよいかを考えてみます。決まった手順や「こうしなければいけない」というものはなく、自分にあったやり方で決めていくことが大切です。活動するのはあくまでもあなたなので、自分も楽しい、頑張りたいと思える活動内容、活動相手を探し出しましょう。以下に活動をはじめるに当たってのポイントとなることをまとめておきます。
1-1 村選び
任地に赴任してから暫くは自分のまわりの状況を知ることや、複数の村に足を運んでみることに時間をかけてみましょう。いろいろな場所に赴いたり人々に出会うことを通して、また上司からの紹介により知るようになった村々に通って、その地域のことを更に知る時間を作ることが大切です。ある程度の現状把握が出来てから活動村を決めるのが良いでしょう。
配属先が村を紹介してくれなかったので自分で探した。きっかけは配属先に来た人、街で声をかけてきた人など
上司の住んでいる村を訪れた時、知り合った人と仲良くなったため
自分の住んでいる村
配属先まで来て、是非村に来てくれとお願いされた
紹介された中から自分で無理なく通える村を選んだ
市役所で月一回村長の集まる会議があり、そこに参加し自分のやりたいことを説明し、興味を持った人の村を選んだ
1-2 活動対象を決めるとき
隊員として誰とどのように関わっていくのかというのは活動の根本です。自分のやりたい活動に合わせて相手を選ぶことも、相手を選んでそこからやれることを探していくことも出来ますが、いずれにしても活動の対象を決めることはもっと重要なことです。「この人たちと一緒にやりたい」と思える相手で無ければ活動を発展させていくことは出来ません。時間をかけてでもあせらずに自分にあった活動相手を探しましょう。
◆主な活動対象とその注意点、利点、問題点
女性グループ
村の女性は報酬の無い家事や育児、畑仕事に縛られがちです。しかしグループで活動することで収入を得たり、生活の向上を図ったりすることが出来ます。女性グループは村の女性たちが組織として何かの活動をするべく形成されます。長年の経験があるグループ、活気あるグループもあれば、活動をしたりしなかったり、またさまざまな問題を抱えているグループもあるでしょう。自分が出会ってグループがどのような組織であるのかまず知ることが大切です。
女性グループのメンバーは基本的に女性だけですが、顧問として男性がいたほうがスムーズに進めることができるようです。
青年グループ
青年グループは若者が自分たちの現金収入の向上だけでなく、地域の生活改善のためにさまざまな活動を行う組織です。青年たちは自分たちの村の外に出て活動することが比較的容易で、村にとっても良い情報源となる存在です。
小学校
青少年隊員、農業隊員、医療隊員、村落隊員など様々な職種で携わるのが小学校での活動です。隊員のアイディアによって様々な啓蒙の場、実践の場となります。ただし、活動を行う際には先生たちだけでなくPTAや村の住民からの理解や協力を得ることも大切です。
個人農家
農業隊員にとっては個人を対象に活動する場合もあります。農民を組織化できない状況では個人と活動したり、複数の個人を巡回する活動もあるでしょう。この形態にはある一人の人と密接にかかわる事ができ、グループ活動よりも比較的スムーズに活動が運ぶメリットがあります。またその個人農家から他の農家への波及効果も期待できます。しかし個人相手というだけに、そこで問題が生じた場合のリスクも大きいといえるでしょう。
周囲の妬みが起こる
技術、知識に自信が無いならまずは個人からやってみると良い
村の有志
活動内容が決まっている時などに住民に呼びかけ、興味を持って集まった有志と活動することもありえます。この場合もリーダーを決めて進めていったほうがスムーズに進んでいくようです。また、村長等村の有力者を通し呼びかけた方が人が集まりやすく、活動もしやすくなります。
その他の活動対象
農業組合、中学校、高校、各種医療施設、村の保険委員会、その他住民組織など。
このほかにも自分の活動内容、活動目標に合わせて対象を選ぶことができます。例えばある村のグループとかかわるというだけではなく、いろいろな村を回りその村の(グループ化されていない)女性たち、子供たちまたは住民全体に啓蒙活動、各種セミナーなど単発的に行っていくなども一つの活動形態です。この場合付き合いは薄くなりますが、様々な地域を対象に広く人々にかかわっていくことができます。
◆グループで活動するということ
この国ではグループを組織する事により支援が受けやすくなるということは無いようです。現状としてグループ自体の数、ましてや活発に活動しているグループはあまり多くありません。しかし、グループを組織し活動することは住民自身にも多くのメリットがあります。
グループ活動が「人々が協力して何かをやる」ということは明らかです。しかし、それがどのような形で現れ、どんな意味を持つのかはグループによって違うでしょう。そのメンバーがグループで活動することの意義を認識しあうことが大切です。これ無しでは隊員も住民も活動すること自体難しいといえます。そのためには活動を始める前にそのグループのことを良く知っておきましょう。これまでそのグループがどのようなことをどのように行ってきたのか、グループで活動してきたことに着いてメンバーはどのように思っているのか聞いてみると良いでしょう。
グループを対象とした活動は様々な可能性を持っています。既存のグループにかかわり活動を進めていくこともありますし、新しくグループを結成し、住民による組織作りを助けていくことも活動の一つです。その場合、二年という短い任期の間に活動を形にしていくことは難しい面もありますが、住民がグループ活動というものの利点を見出す事ができれば彼ら(彼女ら)は自分たち自身で動き出すものです。既存のグループと活動するにしても、新しくグループを立ち上げるにしても、自分がどんな人たちとどのように関わって生きたいのかをじっくり考えて活動相手を選びましょう。
1-3 活動内容を決めるとき
村でどんな活動をするか決める要素は様々です。
- 前任者からの引継ぎを希望されている
- 配属先から「こういうことをやって欲しい」などの要望がある
- 自分がやってみたいことと活動相手のニーズ(NEEDS)があっており進めていく
- 活動相手からのニーズ(NEEDS)に基づき活動を展開していく
いずれにしても最終的には活動を一緒にする相手とよく話し合うことが大切です。活動は一人でやるのではなく相手がいて初めて成り立つものです。仮に自分がやってみたいからといって活動するとしても「誰のための何のための活動か」ということを常に頭においておかなければなりません。活動内容を決めるプロセスでは配属先との協議も交え、採取的には自分がどんな活動をするのか配属先に報告しましょう。
では現在いる隊員はどのように活動内容を決めたのでしょうか。
他の隊員の活動内容を参考に
住民同士による話し合い。村が抱える問題を話し合ってもらい、優先課題を取り上げた
NGOが他地域で行っていた活動の真似
住民からの要望であり、JICA専門家から専門的なアドバイスをもらえたから
住民との話し合いの成り行きで
活動相手のNEEDSの中から自分のできることを選んだ
自分からいくつか提案し、住民の話し合いで決めてもらった
具体的な要請がある場合を除き、住民の声を聞き、話し合い「NEEDS」を抽出し、自分のできることとやりたいことと照らし合わせ活動内容を決めていく隊員が多いようです。
しかしここで十分注意しておかなければならないことは、「NEEDS(必要)」と「WANTS(予定)」の違いです。つまり、住民は「これ(こういうこと)が不足しているから欲しい」(=「WANTS」)と要望を出しますが、それが本当に「必要」(=NEEDS)であるとは限らないということです。住民が「欲しい、やりたい」といったこと「本当に彼らにとって必要か」の見極めは非常に困難です。しかし、この点を熟考しなければ活動が実りあるもの、持続可能なものにつながるでしょうか。この二年の間「何が必要なのか考えることに終わりは無い」という姿勢が大切です。
また具体的な決断は可能な限り住民にさせましょう。つまり提案はしても押し付けないことです。やらされているという気持ちが住民にあるとどうしてもモチベーションは下がります。自分たちが決めた自分たちのプログラムという意識を持たせるようにしましょう。
1-4 活動のパートナーについて
私たち隊員は赴任してから暫く現地事情をよく知らない上、二年という限られた活動期間の中で何もかも自分ひとりでやろうと思ってもやれるものではありません。やはり自分のやろうとしていることに理解を示し、支えてくれる人の存在が非常に重要になってきます。現地の事情に精通し、自分と一緒に活動に携わってくれる人で、いわゆる良きパートナーとなりうる人が自分の周りに存在しないか考えてみましょう。
要請背景調査に書かれているカウンタパートは配属先の上司などですが、現実には一緒に活動できる相手ではないことが多いようです。実際に退院の活動に力を貸してくれ、地域のために貢献しようという意欲のある人がパートナーになりうるといえるでしょう。言葉の面で助けてもらったり、活動先のことを教えてもらったりすることから始まるかもしれません。更に深く関わっていく上でパートナーの存在は自分の活動のスムーズな運営や、活動の質・効果を高める事にもつながり、あなたが帰った後もそのパートナーの中にはあなたとやってきたことが残っているはずです。何かを続けていってくれるかもしれません。またそういう人材を育てていくことも活動の大事な一環といえます。
パートナーになるということは、信頼関係を築くことといえるでしょう。自分も信頼し、相手も信頼してくれる関係を作るには時間がかかり、また時には見切りをつけることも必要になるかもしれません。それでもやはりパートナーがいるかいないかによってあなたの活動も大きく変わりうるということを念頭に探し続けてみてはどうでしょうか。
ホームステイ先の家族の人。村の有力者だったので
仲のよい住民。失業していたため、時間的余裕があった
村長。活動を一番理解してくれている
省の駐在員がパートナーとしていたのだが、配属先の上司と仲が悪く、上司にその人と一緒に活動するのを止められた。代わりになるパートナーを紹介してくれるといわれたのだが、結局紹介してもらえなかった.
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